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最相葉月コラム/医療個人情報 保護法案では守れない
最終更新日 2002.03.23


最相葉月
02.3.23.朝日新聞「私の視点」ウィークエンド欄より転載


「医療個人情報 保護法案では守れない」

 すでに指摘されるように、表現の自由を制限する恐れのある個人情報保護法案には賛成できないが、ここでは、別の角度からの問題点を指摘しておきたい。

 今年一月、国立がんセンターが初診患者を対象に、検査試料や診療情報を研究に用いるために同意を得るシステムを開始した。体から取りだした細胞などの試料はがんの発生や転移、副作用、とくに先天的な体質とがんによる遺伝子変化の研究に利用されるようだ。 現在の医療を考える上で、これは象徴的な出来事である。医療情報とは個人の人権に深く根ざしながら、一方で、多くの個人情報を必要とする特殊な領域だ。従来は患者に危険もなく不利益にもならないという理由から同意を得ずに利用されてきたが、このままでは個人情報保護への意識の高まりから立ち行かなくなる恐れが出てきたのだ。 ヒトゲノム解読後、医療は遺伝情報を軸とする大きなパラダイム変換の最中にあって、個人の体質に応じたテーラーメイド医療、ゲノム創薬の開発をめぐり東京圏と関西を二大拠点とした官民プロジェクトも始動している。医療情報が個人の内に閉ざすのではなく、未来につながるものと認識してもらうには、最低限、本人同意というプロセスで支えなければならない状況だ。

 医療情報はすでに刑法で規定された医師の守秘義務で保護されている。だが、診療や検査データは医師以外の看護婦や事務員、外部の検査会社が扱うこともある。とくに遺伝情報は家系内で共有され、未来を予測する究極のプライバシーだ。

 だが、法案では医療情報が明確に位置づけられず、学術研究は義務規定を全面除外された。がんセンターで行われるような研究には「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」が適用されるが、無断解析があっても罰則はない。それどころか、実際の診療の場で行われる遺伝子診断には公的規制がなく、学会や医療機関の自主的な指針が乱立している状態なのだ。

 21日の本紙朝刊で藤井昭夫内閣審議官は、信用・通信・医療情報は必要に応じて個別法を定めると発言しているが、個別法の必要性は当初から指摘されていたことであり、ヒトゲノム解析が加速する現在、遺伝情報を根幹にもつ医療情報の保護が同時に検討されなかったことの怠慢を感ずる。

 だれが他人に自分の未来を知られてもいいと思うだろう。だが、病に苦しむ人を助けられるなら提供しよう……。脈々と受け継がれてきたそのような牢乎たる意志と苦しみに思いを致し、いのちの連鎖を断ち切らぬよう法に裏打ちされた信頼できるシステムを早急に整備すべきではないか。

 残念ながら、この法案にそのような覚悟は微塵も感じられない。本当に守るべき私は、ここにはない。

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