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最相葉月の「なんでやねん日記」
最終更新日 2004.01.20

2004年1月20日(火)――その54
マントヒヒの親子

思わず感動を伝えずにはいられない!
って、近頃流行の本のキャッチコピーのようですが、ゴミ箱に捨てられる前にちょっと見ていただきたいものがありまして……。

今朝の読売新聞朝刊24Pのマントヒヒの親子の写真をごらんになった方はおられますか。よみうり写真大賞ファミリー部門で大賞を獲られた宮田カツ子さん(鹿児島県・59)の「ごめんなさい」という作品です。なんと、マントヒヒの母親が息子(娘?)の頬を両手でクイッと軽くつねっているんです。つねられた息子のほうは、カメラ目線で笑っている。いたずらをした息子を母親が「こら、いけない子ね」といってたしなめ、それを宮田さんに見られた息子が、「へへっ、怒られちゃった」と上目づかいで恥ずかしそうに笑ってるかのような構図なんです。

宮田さんはこの瞬間をとらえるために、鹿児島市の平川動物公園で5時間、ファインダーを覗きながらマントヒヒを追っていたそうです。本当におつかれさまでした。この写真一枚に出会ったおかげで、街の景色がいつもより明るく見えるようでした。

京大霊長類研究所でチンパンジーのアイちゃんを研究しておられる松沢哲郎さんの言葉を思い出します。意識をテーマにしたシンポジウムだったのですが、松沢さんが動物と人間の違いを「階層」という言葉で説明なさったのです。つまり、心とは、動物には「なく」て人間には「ある」というものではなく、階層の違いがあるだけだということでした。家族のようにチンパンジーを育てている松沢さんだからいえることだといわれるかもしれないですが、一度でも犬や猫などペットを家で飼われたことのある方なら共感していただけるのではないでしょうか。もちろん、母親が息子を怒っているようだと解釈しているのは人間である私たちのほうですが。

チンパンジーと人間のたった数パーセントのゲノム差をめぐる研究が行われています。米国の政治学者フランシス・フクヤマは、『人間の終わり』で、バイオテクノロジーの発展は恐ろしい未来を予見させる一方、人間の尊厳を見いだす手がかりにもなるという主旨のことを述べています。人間と動物の違いを知れば知るほど、私たちは彼らをかけがえのない存在だと思えるようになるのかもしれません。そのうち、動物を食べることができなくなるほど…? 

ところで、この「ごめんなさい」の写真を見た家人。へえ、サルってこんなことするんだと言いながら、うちの猫を抱きかかえ、ほっぺたをつねろうと必死になっています。
ばっかじゃないの〜〜〜。
「あのねえ、あんたがエクトルをつねっても意味ないんだよ。エクトルがニケをつねんなきゃ」
 すると、あ、そうか、ですって。

*ちなみに、エクトルとニケはうちの猫の名前です。

よみうり写真大賞HP(第25回の作品は20日現在未登録ですが、近々掲載されると思います)
http://www.yomiuri.co.jp/photogp/

2004.01.20 最相葉月(プロフィール)



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