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最相葉月の「なんでやねん日記」
最終更新日 2002.12.27

2002年12月27日(木)――その27
クローンベビー誕生の未確認情報が
いっせいに報道されましたね...

2002年がまもなく終わろうとしています。LNETも昨年10月に開設、カウンターを今年になってから稼動させて4万件以上のアクセスがありました。一年を振り返ってみて、なんとか一年はやってこられたと安堵すると同時に、もっとわかりやすくするべきだったとか、編集方法にも工夫があったはずだ、などと反省もしきりです。来年は大幅な構成変更も含めた見直しを行う予定です。この間、専門家の方、そうでない方も含めてご関心のある方よりサポーターのお申し出も何件かいただきました。これまでは、できるだけ私が直接お目にかかってお話をおうかがいしてから参加していただくようにしていましたが、遠方にお住まいのため物理的に困難な場合もあり、今後はサポーター制度についても再考させていただくつもりです。この間にご連絡をいただきました皆様、参加していただきましたサポーターすべての皆様に感謝いたします。

ところで、年末のあわただしい中、とうとうクローンベビー誕生の未確認情報がいっせいに報道されましたね。かねてからクローン人間誕生計画を発表していた宗教団体です。クローンであるかどうかはこれから遺伝子を検査し、結果は公表するとしています。この団体の主宰者であるラエルなる人物は自著『クローン人間にYes!』の中で、「正確な肉体のコピーというクローン技術だけではなく、同時の脳の中の記憶や性格を移しかえることで、私たちは本当に永遠に生きられるようになるのです。私たちは過去のすべてを思い出すことができ、無限の知識をたくわえられるようになるのです。人々がいだく究極の夢は、永遠の生命を得ることです。今までそれは、過去の宗教によって約束された死後の楽園という神話にすぎませんでした。しかし、それがついに科学による現実のものとなるのです」と記しています。

ここでは、クローンベビーとは何であるかということから検証しなければなりません。その意味で、この一節によると、まずクローン技術とは何であるかという点から誤解を招く表現をしています。クローン技術とは正確に肉体をコピーすることではありません。今回誕生したのは、夫との間に子どもができなかったので、妻が自分の体細胞核を自分の卵に移植してクローン胚をつくり自分で出産したということです。たしかに、現在の科学技術では自分の体細胞を第三者の卵子ではなく自分の卵に移植するというのが究極の方法かもしれません。他者の遺伝情報がまったく介在していないのですから。しかし、卵に移植するのはあくまでも体細胞です。体細胞は生殖細胞と違って、誕生からこれまでの時間の中でさまざまな遺伝的変異を起こして現在の皮膚なら皮膚、乳腺なら乳腺の細胞となったものです。卵に移植することによって本当に遺伝子時計がゼロリセットされているかどうかはまったくわかっていません。臓器の奇形が多かったり、羊ドリーがいったい何歳なのか、と疑問視されるのもそのためです。また、たとえドリーのように実際に誕生したとしても、クローンといえど別人です。にもかかわらずそこに自分の脳の記憶や性格を移しかえる、とはいったいどういうことなのでしょう。本書によれば、日本で進行中のコンピュータ技術によって可能になるそうなのですが、まったく突拍子もない話です。

それよりなにより唖然としてしまうのが、人々の夢が永遠の生命を得ることといっている点です。不死永世は本当に人類の夢なのでしょうか。なぜ永遠に生き続けることを望むのでしょうか。それが本当の自由といえるのか、私は疑問に思います。この秋からのクローン人間出産に関する報道は何もかもが未確認の大変うさんくさいものばかりです。まともに議論する気もありませんが、LNETとしては誤解を招く情報だけは確認しておかねばと思っていますので、あまりふれたくない話題でしたが言及させていただきました。考えなきゃならないことはもっとほかにたくさんあるはずなんですがね。

さて、2002年もあと4日。私個人としては風邪に明け、風邪に暮れていく、健康を最重要課題だと痛感した一年でありました。今年は、連載以外には『ベスト・エッセイ2002 落葉の坂道』(光村図書)と『わたしの詩歌』(文春新書)、『絶対音感』を小学館から文庫化しました。ほかには、糸井重里氏の『経験を盗め』に参加(糸井氏、前田学氏との鼎談・中央公論新社)、土屋恵一郎氏『正義論/自由論』(岩波現代文庫)と後藤正治氏の『奪われぬもの』(講談社文庫)では解説を書かせていただきました。そうそう、展覧会でお気づきになった方がおられたかどうか、クラフトエヴィング商会の『じつは、わたくし こういうものです』(平凡社)にも参加しております。こうしてみると、どことなく寄生虫というか、人のお仕事にのっかってるような居心地の悪さを感じないわけではありませんが、解説を書かせていただいたり、プロジェクトに参加させていただくことでその作家の方々の世界を改めて知るいい経験になったと思っています。来年は各紙誌の連載ほか、『星ふるふるさと』と『天の塵 海の滋 人の声』を刊行、sportiva誌4月号では長編ノンフィクションを書き下ろす予定です。

来年も引き続きLNETをよろしくお願い申し上げます。
よいお年をお迎えください。

2002.12.27 最相葉月(プロフィール)



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