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最相葉月の「なんでやねん日記」
最終更新日 2003.02.15

2002年2月15日(土)――その30
ドリーが亡くなりました。
いつかはこの日が来るだろうとは...

ドリーが亡くなりました。いつかはこの日が来るだろうとはわかっていましたが、あまりにも早すぎる知らせに呆然とし、無性に涙がこみ上げてきました。遠いエジンバラに生まれ、育った一頭の羊が、自分の中でこれほど大きな位置を占めていたのかと信じられない思いです。

イアン・ウィルマット博士も、ロスリン研究所の研究者たちもみな悲しみに暮れているそうです。つい一週間前に連絡をとったばかりだったのですが、例の騒動がらみの取材が殺到していたようで、ここ数か月は身動きがとれないといったご様子でした。そのときすでにドリーの容態は悪化していたのでしょう。『クローン羊ドリー』の著者であるNYタイムズのジーナ・コラータ記者のインタビューに対し、ウィルマット博士は、ブレークスルーを成し遂げた科学の顔としての役割を本当にフレンドリーにつとめてきた、と語りました。自分たちがいかに愛嬌いっぱいのドリーに助けられてきたか、新しい医科学研究のシンボルとしての役割をドリーが十分に果たしたことをねぎらっていました。

羊の平均寿命は11〜12歳。核を提供したドナー羊の年齢が6歳だったため、寿命ではないかという意見もあるようですが、肺炎はこうした施設で飼われる羊には珍しくない病気だということで、現在のところはクローンであることとの因果関係はわかっていません。今後病理検査などを行った後、ドリーはスコットランドの国立博物館に剥製として展示されることになるようです。

ドリーは私が生命科学に興味をもつきっかけとなった動物です。ドリーがいなければ、このサイトを開設することもなかったと思います。クローンってなんだろう、クローンが社会に、医学の発展に役立つとはどういうことなのだろう。むずかしい技術の話、法律の話、倫理の話、産業の話などを書いたり、シンポジウムに引っ張り出されて話したり、サイトでも紹介したりといろんなことをしてきました。私は科学はまったく専門ではありませんし、科学ジャーナリストでもありません。ただ、一ライターとして、専門家ではない人々と専門家の方々をつなぐ媒介者にはなれるかもしれないと、人前でしゃべるのは大変苦手な人間ですが、この件に関してはシンポジウムのパネリストなども割り切ってやっていたところもありました。

もちろん批判もありましょう。たった一頭のドリーが産まれるために、多くの借腹牛や核移植のための卵が犠牲になりました。ドリーがいなければ、クローンベビー騒動など起こらなかったという人もいるかもしれません。ドリーの愛くるしさがそうした背景を見えなくしてしまったという側面もあるでしょう。ただ、そこで見なくてはならないのは、ドリーではなく、私たち人間の欲望なのではないでしょうか。ドリーは人間を病から救うために生を受けたかけがえのないいのちでした。ドリーを失って、私は自分が悲しいと感じていることに驚いています。しかし、感傷的でいるのは今日限りにしよう、とこの日記を書きながら腹の底にぐいっと力を入れています。

2003.02.15 最相葉月(プロフィール)



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