ときどき、読売新聞は生命科学のスクープを一面トップに持ってくることがあります。
生命科学で議論になっている社会的倫理的問題を先取りしている出来事・事件を報道し、ほら、現実にはここまできているんですよ、とやるショック療法が得意です。諏訪クリニックの根津医師の「非配偶者間体外受精」以降、多いですね。今日夕刊のトップ記事「禁止 ヒトクローン胚 目指す米科学者」「最先端は”異端”」「ES細胞 東大と共同研究」もそうしたショック療法的記事の一つだと思いますが、この記事で意味がわかった読者は果たして何人いるでしょうか??? (たぶん政治社会でネタがなかったのでしょう)
読売新聞2004.5.15夕刊
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20040515i105.htm人のクローン胚を作ることに連邦助成をしない(研究に公的支援が受けられない)米国で、ハーバード大学が民間資金でヒトES細胞を作り、無償で配布しているというニュースが流れたのは3月4日(情報掲示板参照)、その研究者ダグラス・メルトン教授が、東大の浅島誠教授(両生類発生研究の代表的な研究者。カエルのあらゆる臓器や組織を再生した発生学者)と共同研究を行うことになった、文部科学省系の科学技術振興機構JSTの国際プロジェクト、5年で8億円)という内容です。
しかし、記事がいわんとしているのは、相手は「異端」「問題児」であり、もし、米国でのダグラス教授への批判が東大にまで飛び火したら、「どんな反応が米国内で起きるかは不透明で、日本が不要な批判に巻き込まれないとも限らない」、えらいことになるぞ、巻き込まれるぞ、いいのか、という批判記事なのです。要するに、クローン人間ではなく、再生医療のための人のクローン胚作成だって日本では認められていないのに、そこに食指を動かしている研究者と一緒に研究したりしたら、日本まで米国内にある「生命の始まりである胚を壊している」「研究自体が不道徳」などとする「倫理論争」に巻き込まれる「懸念」があると、記者は訴えているのです。
でも、本当に心配しているのかどうか。ダグラス教授はもとは浅島教授と同じ両生類の研究者だったが、息子が糖尿病になったためすい臓の細胞再生専門に転換した、という「物語」も忘れません。「生命の始まりである胚を壊している」「研究自体が不道徳」などということだけが米国のやっている倫理論争ではありませんし、今さら何をいう読売新聞。
議論を喚起するための確信犯記事だとは思いますが、読売新聞編集委員の南砂さんは国の生命倫理専門調査会の委員。日本は米国の倫理論争に無関係でいられると思ってたのでしょうか?
……ああ、なるほど。そういうことをいおうとしてるのですね、この記事は。まわりくどくてわからなかったです。日本でもクローン胚をつくってもいいでしょ、手術でとった卵巣から使うのだったら、などという調査会の報告書が出るかもしれないというのに、あまりに、「国民的議論」にならない事態にしびれを切らしているのでしょう。
おおいに巻き込まれましょう。
が、今日の読売新聞夕刊トップ記事の読み方です。
しかし、一面トップかなあ……。