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最相葉月の「なんでやねん日記」
最終更新日 2004.05.12

2004年5月12日(水)――その65
切除した卵巣から採った卵子を「転用」?!

切除した卵巣から採った卵子を「転用」?!<>これが横暴でなく、何と呼ぶのでしょうか。

しつこいほど何度も書いてきた総合科学技術会議生命倫理専門調査会についてですが、今日、6月中にまとまる予定の最終報告書へ向けての素案作成方針(案)なるものが、薬師寺会長より提示されました。

細かいことはたくさんありますが、ここではとり急ぎ。とうていあと1か月で検討できるはずのない新たな論点が今日初めて公表されたのです。

研究目的のみに女性の卵子を採取することは「母体等への侵襲性等を考慮し認められない」としながらも、「手術等により摘出された卵巣や卵巣切片からの採取」「非受精卵の取得(転用)」を「適切なインフォームド・コンセントのもとであれば容認」するという項目が加わったのです。

再確認のため書いておきますが、これまで胚は不妊治療を受けている夫婦が凍結保存した受精卵で、その夫婦がすでに子供を授かった場合に限り、「適切なインフォームド・コンセントのもと」人胚性幹細胞を作るために使用できる、だけでした。卵子の提供は認められていません。

子供を授かった夫婦に限り、というところが重要です。不妊治療のために何年もがんばったのに授からなかった精神的な苦痛の上に、さらに残った凍結受精卵(余剰胚と呼びます)を研究に使わせてほしいとはなかなか伝えにくいという事情が、当時このことを審議した委員会で話し合われたこともありました。(それが適切だったかどうかは議論の余地ありですが)

しかしながら、今回はずいぶん論理が飛躍します。病気で切除した卵巣、そして、「非受精卵の取得(転用)」というのは、がんなどの病気のため、放射線治療で不妊となることを事前に防ぐため、治療前に凍結保存しておいた卵子などを指しますが、それらであれば、新たに採卵するわけではないから、研究に「転用」してもよいではないか、というのです。

ずいぶんな「転用」ではないですか。まるで、牛、です。

つい思い出してしまったのが、5年ほど前につくばの農水省畜産試験場(当時)で見学させてもらった、牛の卵巣の卵子でクローン胚を作る研究現場のことでした。タッパーのような容器に、研究室に届いたばかりのブルンとした白い卵巣が入っています。なぜ卵巣を使うかというと、卵子がいくつも採れるからなんですよ。ドリーのように、二百数十頭に一頭という低率でも誕生を期待するような研究ができるんです。一度に数百個の卵子を使用した核移植だってできるというわけなんです。その方法で人間もやろうというわけです。

病によって生殖機能を失われた女性とその夫(未来の夫も含め)の心なんか、どこにもないですね。病の苦しみ、子を持つことができなくなったことの悲しみ、その上にまだ、「難病治療の研究のためなのに、それでも協力できないのか」と問われるのでしょうか? 

薬師寺会長は、30回の調査会で自分たちのことを「エリート」と言った人でありますが、今日もまた報告書に「要約」文書が必要な理由を「国民のレベルからみて必要だろう」とのたまわれました。内心「私って偉いのよ」と思うのは別にかまいませんが、真の「ノーブレス・オブリージ」について勉強していただきたいように思います。

それにしても不可解なのが、推進派といわれる人々の譲歩ぶりでした。ここのところ発言がとても少ない。女性から卵子をもらうのはあきらめるけど、あとは捨てるしかない卵巣だったらいいでしょう、ときました。交換条件の密約でもあったのではないかと思わざるをえません。

しかし、「転用」とはねえ……。出直して、来い!!

2004.05.12 最相葉月(プロフィール)



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