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最相葉月の「なんでやねん日記」
最終更新日 2004.07.07

2004年7月7日(水)――その74
慎重派といわれる人たちの相違点

生命倫理専門調査会も7/13の最終報告書決定まで残すところあと2回となりました。

「事前に会長案と採択を知らされていた」と判明した女子栄養大学学長香川芳子委員は、結局あの採決日だけ賛成票を投じ、その後の調査会には姿を現していません。欠席者はほかに、最初からできぬ仕事なら引き受けるな曾野綾子委員、1年以上お休みでこの人を失ったのは半分イタイ良識者だったはずの理化学研究所・相澤慎一委員、お顔も忘れてしまった京都大学副学長の田中成明委員。以上は、専門委員のレギュラー欠席者4名。

出たり入ったり、発言皆無の人も多く、発言しても議論の前提を覆すような突飛なことしかいえない大阪大学学長岸本忠三議員のような総合科学技術会議議員は論外。彼らとこの3年間議論し続けていた専門委員が同一の議決権をもつのは解せません。

出席している専門委員でも、採決に賛成票を投じた読売新聞編集局解説部次長の南砂委員は前々回遅刻、前回欠席。本日もまるでわれわれ取材者の追求を逃れるかのように途中でさっさと帰ってしまいました。この人、ほとんど発言しないので何を考えているのかよくわからず、私の取材に「全国紙を代表して参加しておりますので、自分の意見がなかなかいいにくい」と驚くべき回答をした人です。全国紙を代表しているのなら、それは読者になりかわって疑問を解決していかねばならないのではないしょうか。それとも自分の意見がない?

読売新聞幹部は推進派なので、社の方針に背けないぞと事務局の外山参事官の圧力があったこともわかりました。ということは、国の生命倫理専門調査会(委員を選んだのは、井村裕夫元会長と事務局)は審議の議決権の一つを読売新聞にあらかじめ与えていたことなんですか。そなアホな。

それでも、人クローン胚を基礎研究目的に作成することは決定したとみなされているのですから、あとは報告書案を各章ごとにつめていく作業が行われます。ここへきて、これまで揺れはあったものの、慎重派といわれていた5名の間に大きな違いがあることが明らかになってまいりました。(これまでもわかっていましたが、話がややこしくなるので、書きませんでした)

先日の採決の結果を認めるかどうかはわからないが、より納得のいくかたちにもっていきたいと考える人。
先日の採決の結果を認めず、最終報告書にも反対の人。

前者は、薬師寺会長がいつも頼りにしている京大法教授の位田隆一委員と位田委員といつも席が隣同士の都立大法教授の石井美智子委員、後者が、会長はこの人にこそ直接対峙して問題点を解決する糸口を探るべきだった東大教授の島薗進委員と、島薗委員同様、あるいはそれ以上に生殖補助医療とクローン技術の科学的問題点を徹底して追求してきた基礎生物学研究所所長の勝木元也委員、報告書の論理一貫性の無さ・思考の粗雑さ、審議経過の問題点を指摘している阪大副学長の鷲田清一委員です。

なぜ違いが明確になったかといいますと、前二人が、人クローン胚作成の前提となる制度的枠組みの議論でしきりにヒト胚研究を行うに際しては法整備が必要と主張したからです。2月の国民説明会でもそう言っていましたのでわかってはいたことですが、これは先日の強行採決を認め、薬師寺案にあった解禁の前提となる制度整備の議論を具体的に行っていることになりかねません。(これに対しては、上智大法教授の町野朔委員が、中絶野放しの状態でヒト胚だけ保護せよというのは一貫性に欠けると反論。ただし、町野委員の場合、だからといって中絶からヒト胚まで全体を見直せとはならず、法律も指針もいらない、専門家集団の自主規制に任せよとなるのですから、論理は破綻しています。専門家だけに任せられないからここで3年間議論してきたのに……。ちなみに、町野委員は、まもなく上程される脳死臓器移植法改正案の与党案の素案執筆者です。脳死を一律人の死の基準とし、生前に拒絶の意思表示をしていなければ、本人の承諾なくとも家族の了解があれば臓器提供できるとした驚愕案)

結局、時間切れで「制度的枠組みの議論は充分に行えなかったことは認めます」と会長が発言(これ、重要な発言ですよ)。最終報告書には、会長判断で法かガイドラインかの方向性が示され、後日、反対意見あるいは補足意見のある人はそれを最終報告書に添付、その後、親会議である総合科学技術会議に具申することになりました。注目すべきは上記5名の慎重派の人々の反対・補足意見書です。

<<さきほど入った時事通信速報によると、調査会終了後、薬師寺会長は記者団に「指針で良いと思う」と述べ、最終報告書で指針による規制とする姿勢を示したらしい。

そんな大事なことは記者団ではなく、委員たちの前でいわねばならないことじゃないか!

たった今まで委員には法かガイドラインかはわからないといっておきながら、あとは事務局がよい作文をしてくれればいいということか>>

今日はこのほか、理化学研究所の西川伸一委員や自治医大学長の高久史麿委員が主張していた「卵子提供ボランティア」は認めない合意が得られています。 毎日新聞2004/7/7
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20040708k0000m040087000c.html

朝日新聞はなぜあの議論で生殖補助医療のために受精卵を作成することに合意が形成されたと考えるのでしょうか。上の時事通信記事と以下の朝日記事は、記者のぶらさがり情報がたった今まで行われていた調査会の内容を歪める典型的な例です。 朝日新聞2004/7/7
http://www.asahi.com/science/update/0708/002.html

科学技術会議時代の生命倫理委員会ヒト胚研究小委員会「ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究に関する基本的考え方」(H12.3.6)では、生殖補助医療を含めた研究に対して受精卵の作成を禁止しているわけですから、それをくつがえすのであればこの生命倫理専門調査会はその理由を納得できるかたちで説明しなければならないのです。にもかかわらず、ここがクリアになったとは昨日の調査会の段階でもとてもいえません。こんな大事な部分を朝日新聞は既成事実化しようとしています。

また、本日配布された最終報告書案のP40~46に、論文や研究発表のタイトルだけをずらりと羅列した一覧表が添付されています。「未定稿」とあるように、これは具体的にこの調査会で検討された研究ではありません。こういうことこそ、実際に専門家の説明のもとに議論を深めるべきでしたのに。最後の最後に科学的にも検討しましたというためのアリバイづくりにしか思えません。先般配布された、全国クリニックにおける受精卵作成研究一覧表も同様です。

・そのほか
SPA!7/13 今週号「神足裕司のニュースコラム これは事件だ」
「クローン胚づくり容認で危惧される人身売買という恐怖」
若干事実誤認がありますが、ポイントはおさえておられます。専門外の方にも関心が広がっています。つい先日も、この分野とはまったく関係のない人から「サイショウさんて、いじわるだねえ」といわれました。この日記や文藝春秋4月号で紹介した調査会委員の出席率・発言回数一覧表を読んでくれたようです。ほかにも意外な場所で、「大爆笑だった」「あれは科学的なデータだと思う」など波紋が。
私がここ数か月、以前のようにクローン技術の科学的知見にあまり立ち入らないのは、議論の前提となるこの会合があまりに問題ぶくみだったためです。最近は何を書いてもまるでギャグのようで、かなりこわいです。

総合科学技術会議生命倫理専門調査会
会員名簿および議事録
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/lmain.html

2004.07.07 最相葉月(プロフィール)



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