薬師寺会長が7/7の調査会で「制度的枠組みは充分議論できなかったことは認めます」「法かガイドラインかはここでは決定できない。会長判断で次回にまとめる」といいながら、終了後記者団に「指針で良いと思う」と語ったことは調査会の議論を反故にする非常に重大な裏切り(=国民無視)ですので、強行採決以降の生命倫理専門調査会の経緯を改めて確認しておきたいと思います。
★2004/6/23 「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」最終報告書素案2004/6/23版
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu36/siryo2.pdf
薬師寺泰蔵会長案の強行採決で難病治療を目的とする研究に限り、人クローン胚作成を容認すると決定。しかし、制度的枠組みの整備を容認の条件とする。
(事前に案と採決を知らされていた委員が一部いたことが判明。事前に票読みをしていたことを2004/6/26東京新聞朝刊で、採決を知らせていたことを 7/1毎日新聞で会長自ら認める。採決に対しては全国のメディアから多くの批判があったが、会長はこれを無視し納得のいく説明は行わずあくまでも強行。なお、この日決定した会長案では、以下の整備が行われるまではモラトリアムとすると書かれている。
@クローン人間が生み出されることの事前防止等、人クローン胚の管理に万全を期すとともに、未受精卵の入手を制限し、提供女性を保護するための制度的枠組みの整備
A 人クローン胚を用いた再生医療に向けた研究を進める意義について科学的検証を続ける枠組みの整備。この科学的検証は、人クローン胚に関する研究成果のみならず、動物を用いた研究や体性幹細胞研究の成果も含めた広範な知見に基づいて行うものとする。また、この結果に基づいて必要な場合には、研究中止の勧告も行い得るものとする。)
人クローン胚の作成・利用に関する暫定的結論の提案 H16.6.23薬師寺泰蔵
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu35/haihusiryo.pdf)
★2004/6/30 「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」最終報告書素案6/30版
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu36/siryo4.pdf
ヒト胚研究の前提となる卵子や受精卵の供給源としての生殖補助医療現場での受精卵作成の研究について議論となるが、藤本委員は産婦人科学会会告で認められていると抵抗。調査会は追認するわけではなく、実態不明なまま行われている事実のみ確認。この日は制度的枠組みの話までは到達せず。
(議論されていない制度的枠組みの部分である案11Pには、「生殖補助医療の研究」について「ヒト胚をどのように取り扱うかは、個々人の倫理観や生命観の相違が影響する問題でもあり、国民の意識も多様であるため、強制力を有する法制度として整備するのは、倫理観や生命観の押し付け的な側面もあって、極めて難しい」「当面は強制力を伴わない国のガイドラインとして整備すべきである」12pには、「人クローン胚の研究」については、「クローン技術規制法に基づく特定胚指針を改正するとともに、必要に応じて強制力を伴わない国のガイドラインで補完」などと明記されていた)
★2004/7/7 「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」最終報告書素案7/7版
制度的枠組みの議論に入り、位田、石井委員のフランスの生命倫理法やドイツのヒト胚保護法のような法律が必要だという提案に対し、町野委員が中絶野放し状態で胚だけ保護するのは矛盾だと反論。薬師寺会長は「議論不十分」を認め、法か指針かの結論は会長の判断で最終報告書に明記すると発言。しかし、終了後記者団に「指針で良いと思う」と発表。人クローン胚研究に大量に必要となってくる卵子の入手や女性の保護の枠組みについてはまったく議論されず。
(第4の制度的枠組みにおいて、6/30版において「生殖補助医療の研究」とあった部分は上に引用した文案はほぼそのままにタイトルだけP12で「ヒト受精胚の研究目的での作成・利用」と変更。「ヒト受精胚の生殖補助医療における作成・利用」は産婦人科学会会告を超えるが法律ではない、省庁が策定する「ガイドライン」と明記。ガイドラインに基づく審査は生殖補助医療技術の専門家の団体が行い、国は「団体に属さない者の審査」や「団体が判断しかねる案件の審査に対象を絞って集中的に対応すべき」と書かれている。これについて、石井委員が「あまりに具体的でいきなりだ」と批判。
また、「人クローン胚の研究目的の作成・利用」については、P14に「未受精卵の入手制限については、生殖医療の現場における知見も踏まえ、文部科学省及び厚生労働省において、具体的な手続きの検討に当たるべき」と明記されているが、調査会は上記のように法か指針かで議論。具体的判断はなし。
P11に、研究に大量に必要となってくる未受精卵の入手は、「手術等により摘出された卵巣や卵巣切片からの採取が最も適当な方法」「生殖補助医療目的で採取された未受精卵で同目的には利用されないものや非受精卵の利用とともに、技術の進捗状況にもよるが卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不用化に伴う利用等も可能な場合があり得る」とあり、「女性には肉体的・精神的負担が生ずることが考えられるため、個々の研究において必要最小限に制限されるべきであり、その枠組みの整備が必要である」「ヒト受精胚よりも厳格な枠組みを整備する必要がある」と書かれているが、議論されず)
★2004/7/13 「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」最終報告書案7/13版決定(?)
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上の6/23で記したように、薬師寺会長案にはモラトリアム解除の厳しい条件があり、これが調査会が採決で決定したことの重要な前提、国民との最低限の約束となっています。しかし、6/30と7/7の素案ではその枠組みについてあまりにも甘い要件が作文されていました。議論がそこまでいっていなかったので、委員も十分に検討できていません。もし、7/13の最終報告書案もこのままであれば、生命倫理専門調査会は「枠組みの整備が必要」とだけいい、あとは各省庁に丸投げということになります。会長案には「必要な場合には、研究中止の勧告を行い得る」とありますが、では、それを自分たちが責任をもって枠組みを整備することなしにどのように行うのでしょうか。日本の科学技術政策の司令塔であったはずの総合科学技術会議は、やはり腰砕けだったのでしょうか。
総合科学技術会議生命倫理専門調査会
会員名簿および議事録
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/lmain.html