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LNET倫理委員会/第1回「離婚後の凍結受精卵の行方」
最終更新日 2003.04.11





5.LNET情報サポーターの堂囿俊彦さんより〜
「デイヴィス対ディヴィス事件」控訴審 2003.4.2受信

 第一審の判決をジュニアは不服とした。なぜなら「予審法廷は、州法および連邦法に合致」せず、さらに「予審がメアリー・スーに対し、受精卵の移植を単独でコントロールすることを認めたのは、ジュニアが自らの意志に反して親になることを要求されてもよいと決定し、こうして彼に対して生殖をコントロールする権利 (the right to control reproduction) を否定するに等しい」(13)からである。(14)

 控訴審では、一審において否定された、前胚と胚との区分、胚と人との区分いずれもが堅持され、この視点にもとづき、メアリーのみに保護監督権を認めた第一審の判決は破棄される。

 まず前者の区分について、「移植されていない受精卵と母胎にいる胚とのあいだには、看過することのできない科学上の違いがある」(15)ことが確認される。両者を隔てる決定的な出来事は、着床 (implantation) である。なぜなら胚とは、あくまでも「着床の時点から受精後8週末までの、成長過程にある人間の個体」(16)を意味すると考えられるからである。さらに後者の区分については、以下の二つの理由から正当なものと見る。第一の理由は、テネシー州の不法死亡法では、まだ生まれていない、生存能力のある胎児に対して不法死亡が認められていない点である。(17)つまりここで胎児は人と見なされていない。第二の理由は、州法では、ロウ判決(18)において概要が説明された中絶の「三ヶ月アプローチ」(trimester approach) が採られている点である。(19)そして三ヶ月を過ぎても母胎外での生存が可能になる前であれば、「適切なかたちで管理されている施設において」(20)中絶は認められるし、さらには生存可能期においてすら、母親の生命を救うためであれば中絶は合法化されるのである。

 こうした状況から、「胚は、成長するにつれて、生に対する可能性が増大するがゆえに、単なるヒトの組織よりもいっそう尊重される」(21)ということが明らかになる。そしてこの視点から考えるかぎり、「基本的な市民権」の一つである、「生殖をコントロールする権利」(22)を侵害してまでも凍結胚の移植を正当化するような州の利益は存在せず、凍結胚に対する利益は、もっぱら当事者であるジュニアとメアリーが「連帯して、分有する」と結論づけられるのである。

(13)No. 180, 1990 WL 130807, at 1535 (Tenn. Ct. App. Sept. 13, 1990), aff’d, 842 S.W.2d 588 (Tenn. 1992)

(14)なお、メアリーはこの時点で再婚しており、凍結胚を自らの胎内に戻すことは望んでおらず、その代わりに他の不妊カップルへの提供を希望している。

(15)No. 180, 1990 WL 130807, at 1535 (Tenn. Ct. App. Sept. 13, 1990), aff’d, 842 S.W.2d 588 (Tenn. 1992)

(16)Webster’s Medical Desk Dictionary

(17)Tenn. Code Ann. § 20-5-106

(18)Roe v. Wade, 410 U.S. 113 (1973)

(19)Tenn. Code Ann. § 39-15-201

(20)No. 180, 1990 WL 130807, at 1536 (Tenn. Ct. App. Sept. 13, 1990), aff’d, 842 S.W.2d 588 (Tenn. 1992)

(21)No. 180, 1990 WL 130807, at 1536 (Tenn. Ct. App. Sept. 13, 1990), aff’d, 842 S.W.2d 588 (Tenn. 1992)

(22)「子供をつくるかつくらないかに関する決定は、憲法のうえで保護された選択である。」Matter of Romero, 790 P.2d 819, 822 (Colo. 1990)

堂囿俊彦(編/最相葉月)



2003.04.11



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