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最相葉月の「なんでやねん日記」
最終更新日 2002.04.08

2002年4月8日――その16
クローンベビー妊娠は4月6日毎日新聞朝刊の
一面トップを見て...

クローンベビー妊娠は4月6日毎日新聞朝刊の一面トップを見て知りました。アンティノリ医師の名前を見て、ああ前から物議を醸していた人物かと思い、まず本当だろうかと疑念をもちました。ガルフニュースからアブダビ発タス通信という流れもよくわかりません。他紙を見てみました。産経も一面トップ、朝日は総合面に「妊娠か?」と「?」つき、読売と日経は社会面で小さな囲み記事で、情報源はすべてタス通信でした。

ただ、一面トップで大きく掲載した毎日と産経、それ以外の新聞ではずいぶん温度差があります。全紙読み比べる読者はそんなに多くはないでしょうから、日経や読売、朝日の読者は毎日と産経の読者ほど大きなインパクトはなかったと思います。むしろ、なんだか嘘くさいニュースだな、という印象ももった人も多いのではないでしょうか。

さっそくインターネットでガルフニュースを読みました。確かに、アンティノリ医師は招かれたシンポジウムでそのように発言したと掲載されています。イギリスの信頼のおける科学誌ニュー・サイエンティスト誌でもすでに識者の批判的なコメントが掲載されていましたので、どうやら発言は事実で、かなり波紋が広がっているらしいとわかりました。ただ、各紙のジャーナリストに対して医師は取材を拒否し、それ以上の情報がありません。夫婦や子供への影響を考えてプライバシーを守るということを盾にしているのか、科学的な背景についても一切沈黙しています。夫婦がクローン技術を使うことになった医学的理由はなんだったのか。夫側の不妊といいますが詳細はわかりませんし、使われた卵子が妻のものだったのか、個数はどうかとか、クローン胚作成の成功率や培養方法、遺伝的異常の安全性を確認したのかどうか等々、まったく知ることができないのです。

クローン技術を不妊治療の一環として確立していこう、その第一人者であろうとするのであれば、少なくとも科学的な情報は公開していく責任があるのではないでしょうか。時すでに遅しですが、なぜ社会的な合意が得られるようもっと公の場で議論を行わなかったのでしょうか。医師の態度に失望しました。

案の定、各国各紙には識者の批判的なコメントが次々と掲載されます。クローン人間など語るもけがらわしいというものまでありました。6日の夜には産経新聞から私もコメントを求められました。新聞のコメントは不本意なかたちで要約されることが多いので基本的にはお断りしているのですが、ドリー以来クローン技術の動向を見てきた私としてはやはり発言する責任があるのではないかと思い、お答えすることにしました。

ただ、情報に信憑性が欠けるのでなんとも判断しがたいといったところ、もし妊娠が事実だとしたらどうかと質問されましたので、次のようなことを述べました。

・科学的生物学的な安全性が問題視されているので胎児の健康が心配であること。

・すでに妊娠している女性に他者が中絶を強いることはできないこと。

・遺伝的に同一の人間を意図して誕生させるのは人間の尊厳を傷つけることだとして国際的な批判も多いなか、あえてこういう行動をとることによって影響を受けるのは子供ではないかということ。子供には罪はなく、生まれてくる子供が不利益をこうむったり社会が排除するようなことだけは避けなければならないということ。

・第三者の精子や卵子、受精卵を授受するこれまでの不妊治療のあり方も問われるだろうこと。

などを中心に述べ、結果的には字数の制限からか、子供に言及した部分だけが掲載されました。

ドリーが誕生して6年目になろうとするこの年、とうとうこんなことになってしまいました。第三者の遺伝情報を入れたくないという夫婦がクローン技術に行き着くのは想像できることでした。人のものをもらうぐらいなら、自分たちで完結する方法をとりたいという欲望があるのは当然でしょう。でも、今、暗闇のなかで母の栄養をもらいながら生きようとしているクローンベビーが本当にいるのだとしたら、彼が無事に誕生することを祈るしかないのではないでしょうか。

アンティノリ医師はこれだけの批判に晒されているのです。生まれてくる子供のためにも、医師としての責任を最後まで全うするべきだと思います。

すみません。まだまだ考えがまとまりませんので、(つづく)です。

2002.04.08 最相葉月(プロフィール)



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