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最相葉月の「なんでやねん日記」
最終更新日 2003.07.16

2003年7月16日(水)――その40
実験動物たちのこと

ちょっと前の話になりますが、イギリスの動物権利運動団体の活動家が大学の施設から実験用に飼われていた犬を盗んだとして、その活動家や日本のNPO代表らに対し窃盗容疑の逮捕状が出たという報道がありました(2003.6.30毎日新聞夕刊など参照)。この記事を読んだとき、とうとう日本でもこんな事件が起こったのかという思いがしました。

イギリスの団体は動物のぬいぐるみをかぶった姿でデモを展開したり、施設に侵入して動物を盗んだり、虐待された動物の写真をHPで公開するなどの活動で有名なグループ。これまではヨーロッパやアメリカの企業や大学が中心でしたが、最近になって日本の大学や企業がターゲットとなっているようです。

ヨーロッパでは19世紀なかばから動物保護運動が展開され、20世紀後半には福祉体系が整備されてきました。科学論文の審査でも実験動物の扱いが厳しくチェックされます。本当に試験管を用いた実験ではだめで動物実験が必要だったのかどうか。動物の数や実験回数を最小限にとどめたかどうか。痛みを軽減するよう配慮されていたかどうか。飼育環境は設備、衛生面で十分に管理されていたかどうか……といった点です。イギリスで人クローン胚研究がいち早く行われた複数の背景のうちの一つには、動物を犠牲にする実験をするぐらいなら人体材料を使用せよという動物保護団体の主張があったという人々もいます。

一方、日本では1999年に成立した改正動物愛護法でペットへの意識は高まりましたが、実験動物や将来人間の体の一部になるかもしれない動物、疾患モデル動物、家畜への意識は低く、研究者や実験管理者、各学会の自主ルールにまかされており、公的規制がありません。以前、異種移植用ブタの研究を行うある大学系ベンチャーの取材をしたときに撮影したケージの写真を見て、動物保護に詳しい山内一也先生(ウィルス学)は、「こんな狭いケージではまず批判の対象になるだろうし、論文審査には通らないでしょう」とおっしゃっていました。日本の研究が国際的に認められるための大前提として、実験動物の保護対策があるのです。

そんな折の今回の事件。彼らのやり方には疑問を持ちますが、ヨーロッパと日本では文化的背景が異なるからしかたがない、といっていて許される時ではなくなったということでしょう。現在、人体材料の利用についての規制が議論されていますが、同時に、実験動物と人間の関係も考慮に入れなくてはいけない。動物たちを犠牲にするいたみを一番感じているのは、研究者自身だと思いますから。

2003.07.16 最相葉月(プロフィール)



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