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最相葉月の「なんでやねん日記」
最終更新日 2004.03.02

2004年3月3日(水)――その59
ホストタウン

スペシャルオリンピックスはご存じですか?
障がい者の国際スポーツ大会といえば、身体障がい者が記録を競い合うパラリンピックが有名ですが、こちらは、1968年にジョン・F・ケネディの妹、ユーニス・シュウライヴァー夫人が提唱した知的障がい者による大会です。第1回1968年シカゴ大会以来4年に1度夏季大会、その間の年で冬季大会が開催され、1988年にはIOCに正式に「オリンピック」の名称を使用する許可を得て、世界125万人のアスリート、100万人を超えるボランティアに支えられる大会に成長しました。

小栗謙一監督のドキュメンタリー作品『ホストタウン エイブル2』の舞台は、2003年夏にアイルランドのダブリンで行われたスペシャルオリンピックス夏季大会に参加する日本人選手団のホストタウンとなったダブリン郊外ニューブリッジ。主人公は、この町に住むパーセル一家とその娘エイミーです。このパーセル家、ちょっとただものではないんです。軍人のお父さんとお母さん、そして、なんと双子2組含めて子供が12人。家を巣立った子供たちが里帰りして親戚が集まると、家の中はぎゅうぎゅう詰めです。

18才のエイミーはダウン症、2才下のリンジーは脳性麻痺で足が不自由です。それだけで大変な日常生活を想像してしまいますし、実際、映画でもその断片ははさみこまれます。自分のおなかの子供がダウン症だと知ったときお母さんは大きな衝撃を受けたこと、エイミーが教会で礼拝するシーンでは、障がい者は10年前まで教会にも入らせてもらえなかったこと、病院に行くためにダブリン行きの電車に乗るときはいつも暗い気持ちであったこと、リンジーの靴を支給されるのを半年も待たされて、靴よりも足のほうが大きくなってしまったこと……。リンジーが、自分もきょうだいのように自分が好きなときに好きなように出歩きたかった、家族の中にあっても孤独であったと涙を懸命にこらえながら告白するシーンは胸に迫ります。

でも、そんな困難がありながらも、二人を支える家族、とくにお母さんが素晴らしい。子供を甘やかしてばかりいずに突き放すことだってあります。お父さんは自分が昔、飲んだくれだったといい、妻がこの家族を支えてきたようなものだと反省します。きょうだいたちも、苦労している両親を見ていますから、もちろん手助けはするのですが、二人を特別扱いをすることはなくてごく自然なのです。LNETサポーターの玉井真理子さんがコラムで「障害者の親は最初から障害者の親としてそこにいるのではない」「障害児の親であることを選びなおす道のり」とお書きになっているように、14人の家族がみなそれぞれに手探りしながら生きていこうとするのです。

なによりも、エイミーとリンジーがチャーミングです。エイミーは秘書を目指して会社の電話受付けの訓練を受けているのですが、これがなかなかうまくいきません。時折はさみこまれる電話応対のシーンがくっくっと笑っちゃうんですよ。本人は一生懸命やっているから笑っちゃ悪いなあと思いつつも、でも、そうだよなあ、障がいのある人と一緒にいると、こちらのほうが頭がおかしくなってしまって爆発してしまうときがあるけど、おなかがよじれてひっくり返るほど笑っちゃうことって実際あるんだよなあと思うのです。笑っちゃってから、相手も一緒に笑っているのに気づいて、ああ、私はこの人と一緒にいることで、そうではない人たちよりずっと豊かな感情生活を生きていられるのかもしれないと思うのです。パーセル一家に感じたものも、まさにそれでした。世話をするされるという一方通行的な関係ではなく、自分もまた彼らに生かされている、地域社会もまた彼らと共にいるということです。

映画は、短い夏の色鮮やかな自然とにぎやかなパレードの様子、競技、懇親会、そして、別れ、祭りの後の静けさまでを映し出します。終始、お父さんの語りというかたちでナレーションが流れるのですが、家族に背を向けたこともあったお父さんが日本選手団が去った後で日の丸を片づけるシーンがとってもいいんです。祭りの後、日常が再び始まるということ、でも、昨日までのパーセル一家とはまたちょっと違う。そんなささやかな感情の変化を表すものでした。

「ホストタウン エイブル2」小栗監督の「エイブル」(知的障がいのある2人の日本人の少年たちがアメリカでホームステイする話)に続く第2弾。4/24よりシアター・イメージフォーラムなどで全国公開されます。とても素晴らしい映画です。

2004.03.02 最相葉月(プロフィール)



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